一番心に残っているバレンタインデープレゼントのことをお話しします。あれは去年のバレンタインのことでした。つきあい始めて１年ほどの彼がバラを１輪持って迎えに来てくれました。車で高速道路に乗ったのですが、彼は行き先を聞いても教えてくれません。どこへ行くんだろう？だんだん不安になった頃に着いたのは、神戸のとある飛行場でした。飛行場の待合ロビーから外を見ると、そこにはセスナやヘリコプターが停まっていました。「もしかしてプレゼントって・・・」と私が彼に尋ねると彼は「神戸の夜空をプレゼントするよ」と言いました。
そう、そこは神戸〜大阪・京都までを飛ぶスカイクルーズの飛行場だったのです。
夜景は何度も見たことはありますが、上空から夜景を見るなんて初めてでした。何もさえぎるものがない飛行機からの夜景は、それはもう、今まで見たものとは比べものにならないほどの素晴らしさでした。神戸タワーも、USJも、大阪城も、京都御所も、真上から見下ろすとまるで箱庭のおもちゃのよう。イルミネーションに彩られたそれぞれの街は、文字通り宝石箱をひっくり返したようで見渡す限りどこまでも美しく輝いていました。
私が夜景の美しさに心を奪われていると、彼がそっと手を取り「これからもずっと一緒に居てくれないか？」と言って私の手に小さな箱を握らせました。
飛行機の中が暗かったので注意深く箱を開けてみると、中にはダイヤの指輪が。プロポーズだったんです。光るダイヤが夜景の中に溶けていきそうで、でも負けない光を放っていました。彼の言葉と気持ちが嬉しくて、飛行機の中でずっと手を握り続けていました。一生忘れられないバレンタインのプレゼントになりました。
米沢牛
