東京メトロ銀座線、末広町駅徒歩1分の「以し橋(いしばし)」は、創業明治5年の精肉店をルーツとする、「東京最古」ともいわれるすき焼きの老舗です。
まるで明治時代から抜け出てきたかのようなレトロな店構えで、最上のお肉をリーズナブルに味わうことのできる隠れた名店といえるでしょう。実は東京ミシュランでも1つ星を獲得しており、世界が認めた文明開化の味ともいえます。
「いし橋」ではメニューがありません。すき焼きのコースは「霜降り」と「ロース」の二種類があるのみで、小鉢に続いて本命のすき焼きが供されます。具は春菊・シラタキ・ネギ・エノキダケ・焼豆腐といった伝統的でシンプルなラインナップですが、圧巻はびっしりとサシの入った最上級のお肉です。まばゆいばかりに白く輝いて見えるような霜降りには感動を覚えます。
関東風のすき焼きでは「牛鍋」とも呼ばれるようにたっぷりの割下で煮込むようなイメージが強いものですが、「いし橋」では少なめの割下でお肉を焼きつけるように調味していただきます。
仲居さんが熟練の手際でつきっきりでお給仕をしてくれるため、絶妙のタイミングで焼きあがったお肉をアツアツでいただくことができます。もちろん、具材もお肉のエキスをたっぷりと吸い込んでいるため、野菜とは思えないほどのボリューム感をもちます。
そして、「いし橋」の代名詞ともいえるのが「おじや」。食べ終わった鍋に割下とお水を足し入れ、ご飯を加えて溶き玉子を落とし蒸し焼きに。
お肉と野菜のエキスを余すところなくまとったご飯は底の方がお焦げになって、ふんわりとした玉子の食感とのコントラストが楽しめる変化に富んだ絶品の「締め」となっています。このおじや食べたさに通う常連客も多いとか。
お通しの小鉢も手抜きのない、心づくしの品であることに気付かされます。ある年の一月のメニューでは「レンコンのはさみ揚げ」と「大根とサーモンの巻なます」が供されました。
季節感を大切にするとともに、温かいものと冷たいもの、そして口中がさっぱりとするようなお料理はお肉のうま味を一層引き立てることでしょう。虚飾のない、一本気な名店の味、一度は味わってみたいものですね。
「いし橋(いしばし)」の住所はこちら⇒東京都千代田区外神田3-6-8