焼く前に味付けしてはダメ!
牛肉を楽しむうえで、もっともおいしい、至上の調理法として「ステーキ」の名を挙げる美食家は少なくありません。
ただ単に肉を焼く、というだけのシンプルな調理法ながら、単純なだけにごまかしはきかず、肉本来のうま味を最大限に引き出すためには高い技術と確かな眼を要求される、きわめて奥の深い料理であるといえます。
ステーキの焼き方には大きく分けて「レア」、「ミディアム」、「ウェルダン」の3種類が知られています。
「レア」は表面に焼き目を付けて、中は生の状態のものをいい、それよりもう少し火を通すが、芯にはまだ生の部分が残るものが「ミディアム」、「ウェルダン」はよく焼いて完全に火を通したもののことです。
いずれにせよ、ステーキを上手に焼く方法の原則としては、「肉汁をのがさない」ことにあるといえます。そのためには素早く表面を焼き固める必要があり、強火でしっかりと焼き目をつけることに手際が要求されます。
また、味付けに塩を振ることがありますが、これも焼く前に振って長く置いてしまうと、浸透圧で肉汁が出てきてしまうので、表面を焼き固めた後に、加熱しながら塩を振るのがプロの方法だそうです。
そして、フライパンで焼くにしろ焼き網で焼くにしろ、頻繁にひっくり返すことはご法度とされています。これはむやみに動かすことでお肉の内部に溜まっているジュースが漏れ出てしまうことを避けるためで、ひっくり返すのは表から裏への一回のみ、とこだわるシェフが多いようです。
とにかく、お肉のうま味が凝縮された肉汁を大切にすること、ステーキの上手な焼き方はこの一語に尽きるようです。